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2011年4月 5日 (火)

ヒロシマエディション

 まるよしくらぶのエディションは、結果的に年二回程度になる。今回は冬休み時期に実施する予定だったものを延期したものである。

 この三月で本科生がいなくなるくらぶであるが、卒業を控えた最後の本科生二名、乙男と非文化少年の二人を壮行するのも、ひとつの目的となる。
 広島にしたのは、三人で相談してのことだが、ほとんどは非文化少年の常人には理解しがたい理論で選ばれたと言っていいだろう。呉の戦艦大和ミュージアムをどうしても観ておきたい、という思いもあったようだ。ほどなく九州に転居しようとしているメンバーを連れて広島に行く、という中途半端な選択がまるよしくらぶらしい。
 非文化少年を連れての初めてのエディションだった千葉エディションでは、彼の電車不慣れを考慮して高速バスにしたのだが、他人についていくだけなら乗り換えもできる、と分かったので、今回は「青春18きっぷ」による普通電車乗継ぎである。

 朝の敦賀駅が一応正式な集合であるが、そこへ行き着くまでに三人が合流した。ところが、乙男の方は、何度も確認メールをよこしたにも関わらず、切符の買い方が理解できていない。窓口に二回並んで、変更やら払い戻しやらをしている。この人はしっかりしているように見えて、変なところが抜けているので油断ならないが、これがくらぶ生の標準とも言える。

 敦賀からは播州赤穂行の新快速に乗る。この距離は250キロを超えており、料金不要の列車としては相当な長距離を乗換えなしで行くことになる。乗り通す客は少ないだろうが、われわれには好都合だ。
 しかし、乗り込むと同時に、非文化少年が今買ったばかりの弁当を広げて食べはじめる。この頃は薬の影響もあるのか、食欲が亢進しているようである。四人がけボックスを自分専用の桟敷のように縦横に活用している。まだお昼には遠い。
 大阪までは、浪速エディションで通った道のりなので、わたしもあまり案内することがない。大阪あたりでお昼になったので、わたしと乙男もお昼にする。ここからの神戸・明石あたりはわたしの地元であるし、景色もいい所なので、いろいろガイドしようと思っていたが、二人ともお腹が膨れたせいか、眠ったままである。
 姫路城も天守閣が補修工事で見えないし、それほどエポックがないまま、播州赤穂に着いた。ここで三十分ほどの休憩となる。一時間あれば店に入ってお茶でも、となるが、この時間ではそのへんをぶらぶらするだけである。非文化少年は何かというとトイレに行く。
 ここからの岡山行はつなぎの列車となる。ばらばらに坐って英気を養う。山陽本線と合流する高島でホームに降りて、後続の岩国行を待つ。岩国行に乗ってしまえば、広島まで連れて行ってくれる。

 二人にとってはなじみのなさすぎる地域なので、説明するにも張り合いがない。倉敷の美観地区も福山のお城も知識がないようだ。
 多くのドラマや映画の舞台となった尾道も、二人はその名を知らないと言う。いろんなことを知っていると、旅が楽しくなると思うが、虚しい気持ちで説明は続けた。非文化少年など、アニメであれば知っているはずなのだが、実写には疎い。戦艦大和ミュージアムの下調べは綿密にしてあるようだが。
 ところが、尾道駅を電車が出発し、後方に千光寺山を見上げた乙男が、突然言った。
「僕、ここ来たことありました」
 子供の頃、おそらくクルマで、親に連れられて来たようである。尾道という名では分からず、山の映像を見て気づくとは、どういう認識のし方なのか、わたしには分からない。
 非文化少年も視覚的・色彩的に景色を捉えるのか、広島県に入って屋根瓦の色が赤っぽいものに変わったことに、目ざとく気づいている。石州瓦の島根に近くなったのである。

 まる一日かかって広島に到着した。お腹が空いているし、とりあえずお好み焼きを食べに行くこととし、市電で立町まで行く。広島の路面電車は、地元でいつも見て乗っているのとはくらべものにならないスマートさで、運転頻度も高い。
 一筋入った繁華街にあるお好み焼き屋に入る。ここはお好み焼きだけでなく、いろいろな鉄板焼メニューもあるので、便利だ。ふたりはスペシャルなどを頼んでいるが、わたしはそば入りなど食べたらそれだけでお腹いっぱいになってしまうから、野菜主体の軽いものにしておき、生ビールを飲む。エディションで酒を飲むのは久しぶりだ。
 ここでは、学生の本来教員には話せないような裏話も聞けて、なかなか満足する。非文化少年は相変わらず洗濯のやり方を反芻しているほか、「被爆」と「被曝」の違いを学ぶ。広島に来なければそんな話題はでなかっただろう。わたしたちはといえば、常に非文化少年の放つ何ものかを被曝している。単位がシーベルトでいいのかどうかすら分からない。ただし、乙男は付き合いが長く濃くなったために耐性ができたらしく、非文化少年の話題ミラクル三段跳びにもどうにかついていけるようになったらしい。エディションのタイトルを片仮名にしているのは、彼の危うさを象徴したものである。113161174 11316119b

(写真左は広島の季節ものの名物駅弁「しゃもじかきめし」)

 二日目の朝、非文化少年は花粉症の症状がひどく、ホテル備え付けのティッシュを使い切ったと言う。彼らにはやや贅沢なホテルのバイキングで朝食とし、そのまま自由行動のため解散する。
 わたしも出かけようとしたが、急に非文化少年が言ってきた。
「戦艦大和ミュージアム、今日休館日でした」
 現地に行ってから知るよりはよいとしても、今になる前に調べておくべきであった。自由行動の内容までは関知しない。これから九州との間を何度も往復するのだから、行く機会はあるだろう。

 わたしはわたしの自由行動を終え、ホテルに戻ってきた。
 非文化少年は一応戦艦大和ミュージアムの場所までは行ってきたようだが、やはり休館で、売店は開いていたので、それなりのグッズを買ってきている。それどころか、広島では行かない、と決めていた二次元趣味の店にもやっぱり立ち寄ってきて、千葉や浪速の時ほどではないが、やはり無気味な包みがいくつもベッドにある。
 乙男は、浪速の時と同じく、特に目的を決めずに市内や駅周辺をぶらぶらしていたらしい。こういうのが好きなのだろう。

 ホテルに戻る時、裏通りに飲み屋がぽつぽつあるのをチェックしてあった。そのなかで、肉類が苦手な非文化少年のために、魚が美味しそうな店をみつくろっておいた。そこに入る。大人の居酒屋である。
 すると、メニュー、否、おしながきを見て、乙男が目を白黒させる。おしながきが白黒だからである。和風の飲み屋だから、当然おしながきは右開きであり、白い紙に毛筆行書で献立が縦書きしてある。そのおしながきの見方が分からない、というのである。
 確かに、ファミレスやチェーンの居酒屋、あるいはカラオケボックスのフードメニューにいたるまで、学生の行きそうな飲食店のメニューは、大概料理の写真が入っている。彼は、献立の名前だけでは(まず崩した漢字が訓めない、という部分もあるのだが)どんな料理が出てくるのか分からないのに、どうやって注文するのか、というのである。
 ここまで認識がビジュアルに偏っていることに、わたしも愕然とするのだが、今後社会人になれば、こういう店に入る、というか、連れて行ってもらうことも多くなるだろうから、抵抗があってはいけない。「お造り盛り合わせ」を注文してどんな内容であるかは、店により時期により全く違うので、不安なのかもしれない(そもそも、「お造り」の意味が分からなかったようだ)が、皿がはこばれた時の新鮮な感動があるし、スリルもある。もちろんハズレを抽くこともあろうが、経験でこの店はどういうものを出すか想像するのも修行だ。
 わたしは、無難な盛り合わせやら鶏の唐揚げやら広島名物の牡蠣やらをとりまぜて適当に何品か注文した。幸い見込みに違わず美味しい店だったので、箸が進んだ。料理自体ももの珍しいようで、乙男は天ぷら盛り合わせの皿から赤い身の物を摘んで、これはサーモンですか、などと言う。鮭をあまり天ぷらにしないと思うが、まあ食べてみれば、と言っておく。彼が齧ると案の定人参であった。最後ににぎりの盛り合わせを頼んだが、これにも乙男は驚いていた。何度もおしながきをめくっていたのに、献立に寿司があることに気づいていなかったのだ。

 締めくくりのお茶を運んできた女将さんは、花粉症らしく鼻声である。それに親近感を覚えたか、非文化少年が、
「僕らのなまりを聴いて、どこから来たか分かりますか?」
 などと訊く。それは相当難しい質問だろう。女将さんがヒントを、と言うので、北の方、とか、東尋坊、とかこもごも言い添えるが、女将さんの答は宮城・茨城など二転三転する。ニュースでよく聞く県を適当に言っているだけだろう。福島が出たので、惜しい、「福」の付く県が北陸にあるでしょう、と言うと、北陸って言うと、富山? 石川? で、舞鶴…、となる。どれだけ影の薄い県なのか、と思う。越前ガニが有名かと思いきや、このあたりで蟹と言うと山陰や舞鶴あたりが思い浮かぶようだ。正解を告げると、大将が、ああへしこが有名な、と言う。さすが和食の料理人だが、へしこを出せば分かるなんて、よもや思わないではないか。

 美味しく居心地もいい店なので、つい長居をした。ホテルに戻って風呂に入ると、すぐに日付が変わってしまう。113160962
 静岡県で地震などが起きて新幹線が止まったりしているようだ。明日は早めに帰る方がいいかもしれない。

 最終日に皆で行 くことにしていた宮島はカットすることにし、ホテルをチェックアウトして近くの平和公園を散策することにする。行く途中に、元神戸市電の一輌しかないタイプの電車を見かけ、写真を撮る。こんなのに偶然出会えるのは幸運で、最終日もつつがなく進みそうである。
 二人が初めて見る原爆ドームは黙して多くを語りかけるようで、並んでそれを眺める二人の立ち姿が何となく絵になるような気がして、わたしは二人もろともドームを写真に撮った。
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