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2012年6月18日 (月)

その後の『平清盛』

(放送開始すぐの時期の記事「期待とともに『平清盛』」からの続き)

 『ちりとてちん』の藤本有紀氏が脚本を担当している大河ドラマ『平清盛』を相変わらず観つづけている。視聴率では苦戦しているようだが、そんなことは『ちりとてちん』ファンは体験済みであって、今更うろたえたりはしない。

 前の「期待とともに『平清盛』」の記事の時以来、話の進展とともに、また『ちりとてちん』の面影が新たに見いだされることとなった。

 清盛 は、やはりすぐ下の弟 家盛 との間で複雑な感情を抱き合った。小草若 の立場ということになる 家盛 だが、小草若 と違って、実際に家督を 草々 ならぬ 清盛 に継がれてしまうことになる。その心労のためかどうかは分からないが、家盛 は早々に若死にしてしまう。
 が、そこはよくしたもので、さらに下の弟、家盛 の実弟である 平頼盛(西島隆弘)が 清盛 と対立しはじめる。保元の乱ではあわや敵味方に分かれるか、と見えたが、叔父 平忠正(豊原功輔)が汚れ役を引き受けたことにより、すんでのところで回避される。ものの、清盛 頼盛 を戦力から外す。このあたりでも、清盛 が平氏の血をひかぬ存在であることが、内外に波紋を広げるのである。
 そして、失意の 頼盛 を受けとめるのは、実母である(宗子→)池禅尼 である。

 宗子 もまた、夫 忠盛 の生前、清盛 の実母 舞子 の形見であるあのお守り、鹿の角を見つけて、これまた 家盛 を失った負の感情を昂らせることとなる。
 このように、もう用済みかと思われた小道具が、さらに深い意味をもった働きをみせる。ところが、『ちりとてちん』ゆずりである。
 個性豊かな息子たちと絡んで、池禅尼 役の和久井映見さんの安定した演技が見られる。糸子 とはタイプが違うけれど、男社会で翻弄されつつもしっかりと支えを務めている妻ないし母のはかなさを、十二分に感じさせてくれる。

 和久井さんに加えて、『ちりとてちん』レギュラー陣からは、青木崇高さんと加藤虎ノ介さんが出演するようになった。
 青木さんは比叡山の僧兵 鬼若 の役であり、これは後の弁慶らしい。青木さんの猛々しい大男ぶりは堂に入っていて、草々 の時のやたら怒鳴りまくるばかりのキャラと違って、まさに豪快である。青木さんの演技は、『ちりとてちん』の時より磨きがかかり、深みがでてきたような気がする。青木さんは、現在放送中の火曜ドラマ『はつ恋』にも準主役級で出演しており、こちらではうって変わって、癌を患う妻を救い支えるために奔走する一本気で誠実な夫を演じている。こちらの演技も堪能したい。
 加藤さんは、藤原家成(佐藤二朗)の養子であることから平家の遠縁にあたり、信西(阿部サダヲ)の家人である 師光 の役だ。この人は、後に権勢を誇る 清盛 を面罵したりするらしく、毒舌キャラであるところが 徒然亭四草 と通じる。
 こうした懐かしいレギュラー俳優の演技をまた見られるのは愉しいことである。惜しむらくは、この三人が互いに絡み合ったりする場面があまりなさそうなことだ。
 さらに付け加えるなら、同じ藤本脚本だった『Q.E.D.証明終了』の主演を務めた高橋愛さんも、家成 の娘 経子 役で、NHKドラマ再登板を果たしている。

 『ちりとてちん』の作品構想の一つのモチーフは「シンクロ」であったが、『平清盛』でも、源氏と平氏の間をシンクロさせているようなところがあり、特に保元の乱後の斬首の場面は、『ちりとてちん』にもなかったほど明確な演出でシンクロがなされていた。
 すなわち、清盛忠正 を、源義朝(玉木宏)が父 源為朝(小日向文世)を、それぞれ斬ろうとする様が、かなり小刻みに交互に描かれ、同じ展開を見せる。「斬れ」→「斬れませぬ」→「斬れ」という科白のやりとりも同じである。そして、最後の最後で、清盛 は斬ったが 義朝 は遂に斬れなかった、という差異にもっていき、この後の天下の行方を暗示する。

 清盛の嫡男で生真面目な 平重盛(窪田正孝)が 経子 との婚礼の途上で突然破談を申し出る。深刻さは全く違うものの、婚礼がむちゃくちゃになるというのも 喜代美 のそれを思い出させるし、それがなぜか強引に丸く収められるのも、似ている。
 忠盛清盛 の間にあった父子の確執は、清盛重盛 の間にも再現される。清盛 はかつて 忠盛 に言われたとおりの言葉を 重盛 に投げる。世代を跨いでのシンクロもまた、草若小草若正太郎和田正典(松重豊)など、いろいろな組み合わせがあったのと同じだ。

 それから、『ちりとてちん』から観つづけている人なら、間違いなくにやっとしたのが、悪左府 藤原頼長(山本耕史)が飼っていたオウムであろう。もちろん、四草 が飼っていた九官鳥ヘエベエと同じ趣向なのである。
 ヘエベエは、四草 が「崇徳院」を、小草若 が「はてなの茶碗」を、それぞれ熱心に稽古していたのを聞き覚え、それを他の人物に伝え思い至らせる役割を果たした。
 オウムは、頼長 の全盛時代には、彼に媚びて褒め称える人々の賞賛の言葉を覚えたし、頼長 が保元の乱に敗れ失意のもと死んだ直後には、父 藤原忠実(國村隼)への思いを 頼長 に代わってオウム自身瀕死の体で届け、涙を誘った。

 なお、「崇徳院」と言えば、『ちりとてちん』、そして『てっぱん』でも、重要な場面で登場した落語ネタだが、『平清盛』には 崇徳上皇(井浦新)その人が登場し、落語でもおなじみの「瀬をはやみ…」の歌を、讃岐へ流されつつ詠む。
 これも何だか、やっとここに辿り着いた、というような達成感を、不思議におぼえるのである。
 藤本さん、よほど崇徳院さんの歌がお好きとみえますな。

(放送終了後の記事「『平清盛』を観終えて」につづく)


 

(↓解題本『『ちりとてちん』に救われた命』は、平成26年末をもって、書店・Webでの販売を終了します)   

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