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2012年8月 7日 (火)

流行語対照(12)~ 「〈感情系名詞〉+感」

 名詞自体に既に感情の意味を宿しているのに、それにわざわざ という接尾語を付ける、というある種の二重表現が、しばしば「おかしな日本語」として槍玉に上がる。
 代表格は、期待感不安感 の二つであろう。 

 期待 とか 不安 とか言うだけで、感情をあらわしているのだから、 をつけることは、屋上屋を架すようなものだ、というわけである。
 それはそのとおりだし、わたしもあまり使う気にならないが、ではなぜその二語に限って が下接するのだろう。他の感情系名詞には、あまりみられない現象である。

 例えば、不安 の類義語である 心配 には、 がついて 心配感 とはならない。期待 とは逆に悪いことが起きることを予測した感情である 恐怖 は、恐怖感 と言わなくはないが、期待感 ほど一般的ではないだろう。
 威圧 も一種の感情ではあるが、威圧感 となると、むしろ 威圧 を受ける側の感情を指すことになるから、 のあるなしで意味が異なり、威圧感 という語の存在意義は明確にあることになる。

 だいたい が下接するのは、充実 とか 切迫 とか 達成 とか、感情をあらわすのではない名詞であろう。 を付けることで、充実感切迫感達成感 などと感情系名詞に変わる。
 そうしてみると、期待不安 は、それ自体感情系の意味が薄れてきているのでないか、と仮説することができる。 を付けてやらないと、確かな感情系名詞として機能しない背景があるのではないか。
 期待 は、それ自体が教育心理学などの術語だし、確率論における 期待値 というような術語もある。不安 なら 不安材料 とか 社会不安 などという複合語が用いられる。いずれも、個人の感情を超えた無機的な意味での用法が少なくない。心配 にはそのような用法はなく、個人の感情を指すことがほとんどだろう。 
 だから、期待不安 を個人の感情の意味で用いようとするとき、 を付けないと、その生々しさが伝わりにくいのではないだろうか。

 とまあ、ここでは仮説だけ放り出しておくことにする。感情系名詞を洗い出しての検討、例文を数多く作っての実証、また統計的処理などは、あちこちの卒論に譲ってよいだろう。 

 

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