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2012年10月11日 (木)

小浜エディション・福井支部例会

 これまでの記事では浪人とか土木作業員とか呼んできたくらぶ生が、ようやく当初(でもないか)の目標である海保に合格した、ということで、まるよしくらぶでは、急遽夏のプチエディションを実施することにした。通常のエディションと異なり、日帰りだから「プチ」だ。
 行先は小浜とする。かの非文化的生活を送る少年が九州の大学に進学する直前には、ヒロシマエディションを、古くは、番頭格のUSJ支社長が四国に進学する直前に神戸エディションを、行った。つまり、誰かが遠方に赴く際に「同方向へ中途半端に送って行く」という傾向がある。
 その伝に従い、海保の進学先である舞鶴(まいづる)への中間地点、小浜(おばま)を目指すことにした。小浜はわたしの好きな『ちりとてちん』ゆかりの地でもあり、その意味でも再訪が愉しみだ。

 非文化少年がわたしの家に寄ってクルマで拾ってくれることになっていた。少年にしては正確な時刻に、到着を知らせる電話が鳴った。研究室に着いてみると、既に海保が到着しているし、そしていま一人の参加者である留学帰りの現役生も、その顔が見えた。今日のエディションの同行はこの四人となる。

 海保が主賓なのに彼の運転するクルマで移動となる。
 北陸道で敦賀(つるが)まで行くが、少年がうるさい。もう南条(なんじょう)か、もう今庄(いまじょう)か、もう敦賀か、と、それぞれの地への半分くらいの所で声を挙げる。閉所は苦手なようで、トンネルに入ると特に不安を喚く。留学帰りもまたクルマに酔いやすい質らしく、こちらはあまり口数が多くない。
 敦賀からは国道27号バイパスを行くが、途中ドライブインで休憩をとる。このドライブインは、所属校から学生を引率して行ったときなどにもきまって休憩で寄っていたので、勝手が分かっている。ところが、バイパスが開通し、そのバイパスから外れてしまったからであろう、以前と比べて閑散としている。心配だが、少年が菓子など買って貢献している。十五分ほどの滞在で、出発する。
 27号を直行すれば小浜に着く、と思ったのだが、ケータイのナビは、それとは異なる道を示している。気山(きやま)駅付近で小浜線を渡り、トンネルを抜けたりして、若狭湾に出る。海沿いにけっこういい道ができていて、内外海(うちとみ)半島の付け根を突っ切って北側から小浜へ入っていく。
 こういうルートで小浜に来るのは初めてである。南北に長い小浜市街のあちこちに『ちりとてちん』のロケ地が散らばるので、北側から入るのは好都合でもある。わたしがいろいろ解説しながら走る。ドラマを観ていなかった者でも、そういう解説を含んで観賞すると、面白いらしい。殊に、留学帰りの知的好奇心は、会話していて張り合いがある。
 フィッシャーマンズワーフの横を抜け、小浜港のほとりにある、「御食国(みけつくに)若狭おばま食文化館」に着く。もうお昼前になっているので、まずはここに付属のレストランで、昼食である。
 海保は豪快に半身の浜焼き鯖が主菜として君臨する定食(写真左)、わたしは鯖の竜田揚げ(中)、後の二人は穴子が主体となった天ぷらが載った、というかはみ出した丼(右)を注文し、舌鼓を打つ。どれも、焼きたて・揚げたてはえも言われぬ。

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 食文化館の本体の方に入り、展示を観る。『ちりとてちん』に因んだものは減っていたが、和田正太郎 正典 の仕事場のセットはそのままだった。以前には気づかなかった、正太郎の言葉を刻んだ瓦、小浜の一同が塗り箸イベントで作った巨大塗り箸なども展示してある。

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 これから小浜散策に出かけるが、小浜という街は、歩いて巡るには広すぎ、さりとてクルマでは散在する見どころにいちいち停めて降りなければならない、という扱いにくさがある。まず、海沿いに走って小浜公園にクルマを停めた。
 三丁町あたりを歩くのだが、この後常高寺(じょうこうじ)の擬似踏切も皆に見せたい。電車の来る時間に合わせて着かねばならないので、廻り道で時間を稼ぐ。狭い道が入り組んだ古い町並みなので、迷いそうになる。

 常高寺に着いてみて驚いた。ここは、お寺に上がる階段としか見えないのに、実は線路が通っているところがサプライズなのだが、いつの間にか階段と線路の間に柵が作られているではないか(写真。階段下にしゃがんでシャッターチャンスを狙うのは、留学帰り)。これでは意外性が半減する。

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 常高寺は、『ちりとてちん』の名ロケ地というだけでなく、その後の大河ドラマ『江(ごう)』でもヒロイン の姉 が建立した寺ということで登場したため、観光客が絶えなかったようだ。それで、危険防止の策がとられたのだろう。あるいは、事故寸前の事案が起きたりしたのかもしれない。わたしなどがこんなブログなどで紹介したりしたのもいけなかったのかもしれないが、おおらかさが失われたようで、残念である。
 それでもとにかく写真は撮りたいのだが、こういう肝腎な所にきて、わたしのスマホが働かない。ディスプレイに「本体温度が上昇したため、カメラ機能を停止します」という文字が出ている。しかたなく、他の者たちに写真を撮ってくれるよう頼む。この写真は、少年がスマホの連写機能で撮ったうちの一枚を送ってもらったものだ。

 八百比丘尼(はっぴゃくびくに)の入定洞まで歩く。ここは通常中まで入れるはずなのだが、あいにく柵に鍵がかかっている。雨の日は閉鎖するらしいが、今日は晴れている。朝方降っていたからだろうか。
 坐って休憩できるようになった四阿には、かような貼紙がある。偽ガイドは案内料をせびったりするのだろうか。

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 そこから小浜公園に戻る途中、何の変哲もない店先に、こんな看板を見つけた。
 店であることは明らかだが、何の商売かは書かれていない。周囲を見回してもヒントになるものはない。薄気味悪いが、ガラス戸ごしに見える店内が、酒屋であることを教えてくれる。

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 意を決した少年が、ガラス戸を引いて奥に声をかける。
 女将さんと暫く話して出てきた少年によると、これは特に意味があるというわけでなく、ただ普通の看板を上げても目立たないので、ちょっと変わったのにしたかった、思いついた文言がこれだった、宗教などの背景は全くない、とのことであった。
 少年の取材力もなかなかのものだし、店の狙いも当たっている。少年はお礼がてらポカリスエットを購入したのである。こういう自由さが、『ちりとてちん』の精神に通じる、と言えなくもない。

 今度はクルマを小浜公園に進め、市の中心部を歩く。
 『ちりとてちん』モニュメントがある市役所を見てから、いわゆる鯖街道の起点標識や「魚屋食堂」のある商店街に向かう。途中、少年が、
「あ、電車や」
 と声を挙げる。公園にSLが保存してある。この子らにとってはこれも「電車」になるらしい。

 はまかぜプラザの「ちりとてちん」資料館も見学する。わたしにとっては再訪である。
 前回はなかったと思うが、小浜の和田(正典)家の鳥瞰模型と、ドラマで常打ち小屋「ひぐらし亭」のセットに実際に使われていた看板と塗り箸モニュメントも展示されていた。 

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 ここで備え付けのノートに記入などした後、小浜を後にする。

 喉も渇いてきたので、ちょっと寄り道にはなるが、鯖街道の途中にある熊川宿(くまかわじゅく)で休憩することになる。
 道の駅にある食堂でお茶を飲む。ここは接客が極めて貧弱であったことを、店に入ってから思い出した。いかにセルフサービスであっても、訪れる人を気持ちよくもてなそうという思いを込めた接客態度が、ある店にはあるものである。

 ともかくも水分補給はでき、一路わたしの家に向かうのみである。
 帰りの車中は、少年の独演会であった。彼の考案したという人物評定基準にいろんな人を当てはめて採点している。どうも適当な基準なので、あてにならない。あるいは、次の大地震を予言して見せる、などと言う。一応スマホのメモに書き留めておいたが、これもあてにはしていない。こういうのを世間では中二病というのだと思うが、本人は本気らしい。
 最初は四人で話していたが、同じような話ばかり繰り返すので、だんだん相手をするのは運転している海保だけとなり、わたしは景色を眺める方に重点を置きはじめた。留学帰りを見ると、頭が下がって目が閉じられている。ひとの話を聞き流すことなどまずない人なのだが。
 残念ながら、留学帰りは翌日の予定などもあって、ここで離脱である。これは少年が自分のクルマに載せ替えて送っていく。海保は買い出し、わたしは一旦自宅に帰り、彼らを待つ。

 買い出しの結果は、今までも失敗してきたのによくこれだけ、と思うほどの大漁である。
 わたしも少しばかり食べ物を用意したので、テーブルに乗らないほどだ。それでも、食べていくとそれなりに減っていく。
 バイトがあるので小浜行に参加できない、と言っていた乙男がやって来た。夜の部だけでも参加しては、とわたしが声をかけておいたのである。
 しかし、メンバーが変わっても、少年の口は止まることがない。主賓を立てるなどという発想はないのだろう。話が途切れないのはいいことだが。他人が真剣に悩んでるようなことに対しても、
「そんなの、カダフィ大佐が死んだことに比べれば大したことないですよ」
 などと意に介さない。なんでカダフィ大佐なのかは不明だが、何でもそれで片づける。こんなものが鳥瞰的思考などと思ってもらっては困る。これは思考停止である。

 結局少年のペースで未明までしゃべり続け、お腹だけはくちくなって、おひらきである。拡大版総会としては、まずは成功かと思う。

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