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2013年3月15日 (金)

『イ・サン』に感謝

 人気韓国ドラマ『イ・サン』のNHK総合での放送が終了して、二カ月が経った。
 日本の大河ドラマすらそんなに熱心に観ない(昨年の『平清盛』は例外)わたしが、韓流ブームにのったおばさんでもないのに、なんで一年十カ月にわたる放送を、一回も欠かさず観続けることができたのか。自分でも分析しかねていたところである。

 『イ・サン』は、李氏朝鮮王朝のなかでも名君と評判高い正祖(チョンジョ)の一生を描いたものであった。は李氏の「李」であり、サン が名である。韓国でも大変な人気を博したという。

 正祖は、思悼世子(サドセジャ。世子とは皇太子にあたる位)の子であるが、この思悼世子は、先王 英祖(ヨンジョ。サンの祖父)から謀叛の疑いをかけられ、刑死させられてしまう。つまり、罪人の子と見なされたわけである。
 ここがよく分からないところで、日本の感覚なら、そういう場合 思悼世子 の一族ともども処刑されるか失脚させられるかで、二度と権力の中心には位置できないのではないか、と思うのだが、サン 自身は世孫(セソン。皇太孫)となって王位継承権は保持するのである。思悼世子の妻である 恵嬪(ヘビン。サンの母)も、内命婦(ネミョンブ。宮女)の実力者の一人として宮中に留まる。
 そうはいっても、思悼世子 が謀反人に仕立て上げられるのは、主流派の支持を得ていない立場だったからで、それは サン も同じことである。
 非主流派の世孫、そして王として、苦しい立場を常に強いられ、それを撥ね除けて数々の改革をなしたのが、イ・サン なのだ。

 イ・サン が子役から大人の役者…すなわち主演のイ=ソジンさんに交替した最初のシーンは、というと、いきなり主流派が放った(と思われる)刺客に襲われ、格闘して撃退する、という場面だったのだ。つまり、彼の人生は、何度となく命を狙われ、失脚させようと企てられ、造反の憂き目にも遭う、過酷なものであった、そのことを象徴しているわけである。

 サン は、子供時代(といっても既に世孫となり妃も得ていたのだが)に偶然出会った ソンヨン という女子を、最も熱く愛し続ける。 はよくできた人で、ソンヨンサン の心の支えになっていることをよく理解していて、サン ソンヨン が親密にすることを疎まないどころか、ソンヨン が側室に入れるよう、後押ししさえするのだ。
 ただ、残念なのは、ソンヨン がようやく サン との愛を実らせて側室となった後の放送回数が少なかったことである。ストーリーが後になるほど駆け足になっていった。あと十回ほどかけてほしかったくらいだ。そこまでの ソンヨン も、サンに負けず劣らずひどい目に遭ってきたからだ。もっとも、ソンヨン はその設定がモデルとなっている人物とはかなり変えられているようなので、ひどい目は史実ではない。
 もう一人の重要人物として、ソンヨン と共に育てられまた一緒に サン と出会った、パク・テス がいる。これは架空の人物だが、やがて サン の護衛などを務める朝廷の武官の長となり、やはり サン を支える盟友となっていく。テス も内心 ソンヨン に好意を抱いているのだが、サン ソンヨン の心をよく分かっているため、やはり ソンヨン の宮中入りを応援するのである。

 こういう善良な主要人物に反し、抵抗勢力である悪役たちは、ほんとうに分かりやすい悪役ぶりで、ちゃんと勧善懲悪のルールに則って排除される。そこも胸がすくようである。
 主流派の黒幕トップである先王の妃も、要所要所で腹黒い言動をして サン を翻弄し、しかし先王の遺言で彼女を朝廷から追放しきることもできず、苛立たせられる。最後は サン に罰せられてしまう。
 史実では、この先王の妃は、サン の死後またぞろしゃしゃり出てきて、サン のなした改革を元に戻してしまったり、好き勝手をやるのだが、ドラマではそこまでは描かれない。

 イ・サン は、身分を超えた平等な人材登用や奴隷の解放、商業や宗教の自由化など、現代からみると理に適った改革をかずかず行っているのだが、どうしようにも、生まれる時代が早すぎた。
 こんな名君と比べるのはおこがましいが、わたし自身のキャラや立場とも、そういう部分では通じるところがあるので、共感をおぼえた。そしてサンが周囲の数少ない支持者の助けを得ながら難局を切り抜けていく姿は、わたしに勇気を与えてくれた。
 自分の主張を通していくには、慕われる人格を身につけることが大切なのだろう。わたしなどまだまだである。

 魅力に溢れた『イ・サン』だったが、NHK総合の放送は、完全版ではなかった。韓国では一回の放送が七十分だったが、これが六十分に短縮されていたのである。
 是非、DVDを借りて、最初から観なおしてみたいと思っている。そして、『ちりとてちん』の時と同じく、続いて放送が始まった『トンイ』など他の韓流ドラマは、まだ観る気にはなれない。

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