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2013年7月19日 (金)

やっぱり『あまちゃん』

 『あまちゃん』は、やはり『ちりとてちん』ファンにとっても安心して愉しめる朝ドラのようである。
 おおっぴらに言われてはいないが、かなり『ちりとてちん』を準拠枠として使っているのでは、と思う。AK制作の朝ドラとしては珍しいことである。『ゲゲゲの女房』でヒロインがかなりどんくさい造型をされて、外でキャリアを積むのでなく家業と夫を支える役割をしていたことくらいしか従来思い当たらなかったが、『あまちゃん』は、作品構想のレベルで『ちりとてちん』と共通している。

 主人公 アキ の第一次東京時代の高校生活は、全く目立たず名前も碌に覚えてもらえない、というまさに「ビーコ」的存在として(それも被りものを使った観念的な妄想として)描かれた。
 母 春子 の故郷で海女という生き方? に出会い、母に反対されながらも海女を目指すところも、喜代美 の落語との出会いと重なる。
 海女から派生して「海に潜る」つながりの潜水土木へ、さらには海女キャラが受けて地元アイドルから東京に出てアイドル下積み、という展開は、ちょっと尻が地に着かない感じがする。が、これも、喜代美 が落語家でありながらタレント的な活動をせざるを得なくなり、自分を見失いかけたことと同様なのかもしれない。
 アキ は東京に(逆)錦を飾ったわけだが、そこで以前の高校の同級生に出会うと、以前の「ビーコ」的 アキ に戻ってしまったりする。落語家として既に実績を積んだはずの 喜代美 が、帰郷して落語を披露することになった時、「天狗座」の何百人の客よりも昔の自分を知っている同級生の方が怖い、と嘆いたのと同じである。
 親友でこれこそ正統派アイドルの途を突き進むと思われた ユイ は、『ちりとてちん』でいうところの 清海 つまり「エーコ」的存在である。アキユイ にコンプレックスを感じつつも、励まし合いたいと願っている。しかし、ユイ は憧れの東京に出ることもできず、地元でくすぶらざるを得ない。彼女が地元に縛られることになる原因が親の看病にあるところも、清海 と共通である。清海 と同じく ユイ も荒んだ心を表情や服装に露にするのだが、ユイ のグレ方はどうにも類型的というか昭和的というか、そのへんも笑いどころであって、昭和と平成のテイストを行き来する『あまちゃん』の世界を代表しているのかもしれない。
 自分がアイドルとして ユイ に先んじてしまったとまどいのなかで、アキ はこれからもアイドル修業を続けていくのだろう。そしてどこかで ユイ と本当の和解をするのだろう。そういえば、太巻 もキャラやルックスは全く異なるが、言動は 鞍馬 に通じる。

 さて、(北)三陸が舞台である以上、東日本大震災は必然的に劇中で起きるだろうし、主要登場人物の誰かが命を落とすことになるのかもしれない。そこで、地域復興に対する海女やアイドルの役割が問い直されることにはなるだろう。
 (北)三陸鉄道が舞台として重要な位置を占めているので、これの不通から復旧に向けての過程も主要なストーリーになっていくのだろうか。もしかすると、復旧一番列車の発車がラストシーンだったりするかもしれない。

 そういえば、アキ が東京へ出る時、喜代美 が大阪へ出る時と同じく、海岸から大漁旗の見送りがあった。ディーゼルカーの窓を開けて絶叫するヒロインの姿。前者は祖母、後者は母と叔父・弟という違いはあるが。
 祖母 の大漁旗は、昔 春子 が東京へ出る時も振っていたのに、春子は気づいていなかった、今度こそ アキ に想いが通じた、そして 春子 の和解につながる。そういう意味で、大漁旗は『ちりとてちん』よりも高次元の使い方がなされたわけである。
 春子 の 娘である アキ も結局同じアイドルを目指す、というあたり、『ちりとてちん』にあった親子二代のシンクロ(正太郎正典草若小草若 など何組か。師匠と弟子も入れればかなりある)も再現されている。

 ユイ はもちろんのこと、その兄の ヒロシ アキ の憧れの先輩である 種市 など、主要登場人物の多くに「雌伏」の時期が設けられているのも、興味深いところだ。『ちりとてちん』でも「雌伏」や「挫折」が人物に深みを与えていた。

 今後、笑っているばかりでは済まないストーリーが待っていそうな『あまちゃん』であるが、どのように世界が収束していくのか、目が離せない。

 アキ と最終的に結ばれる男性は誰になるのであるか、という問題も予断を許さない。種市 なのか 水口 なのか、はたまた ヒロシ か、あるいは『てっぱん』のように結局誰ということはないのか。
 これは、『ちりとてちん』の時代には、喜代美 の夫になるのは 草々 であると、文字放送の科白字幕の色で早期にばれてしまっていたわけだが、さすがにそういう抜かりはなくなった。 愉しみである。

 その後の展開に即したさらなる考察はこちらの記事

(↓解題本『『ちりとてちん』に救われた命』は、平成26年末をもって、書店・Webでの販売を終了します)  

 

 

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