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2013年7月 5日 (金)

誤読しそうになったニュースタイトル(2)

 やっぱりこの趣向はシリーズになりそうである。意識してよく分からぬタイトルをメモしていると、すぐに溜まる。現代日本語の文法や表現を考えるのにいい題材なのだ。
 早速順不同で挙げていこう。

(11) 「お札で尻拭く写真」選手炎上

 もう現代は、選手炎上 などという表現に驚いていてはいけないらしい。炎上 と注釈なしに書いてあれば、「その人のSNSアカウントのコメントが収拾つかなくなった」と解釈しないといけない時代なのである。

(12) AKB大島、退場謝罪も「嫌い」

 ある程度、その前にあった事件を踏まえて解釈することを期待したタイトルも多い。知らないと意味が分からない。わたしは前の事件を知らなかったので、検索して初めて意味が分かった。
 大島優子さんが、『悪の教典』(この映画、前回も引き合いに出たな。なかなか鬼門のようだ)という映画の試写会で取り乱し、「私はこの映画が嫌いです」とコメントした、という「事件」が先にあったのである。教師が生徒の命を次々奪っていく、という内容が衝撃的だったらしい。それを知らないと、何から退場したのか、何が「嫌い」なのか、タイトルに手がかりはない。大島さんは、自身のブログでそれに関して謝罪をした。
 ただ、大島さんは試写会でちゃんと映画を最後まで観はしたようだ。だから、退場謝罪 はちょっと違うようである。取り乱したために思ったままを報道陣にコメントしてしまったこと、大きく報道されて話題になってしまったこと、それによって映画のイメージを下げてしまったかもしれないことへの謝罪だろう。ブログでもその映画が「嫌い」だということは撤回していないわけである。

(13) ファンモンが電撃解散を発表

 ちゃんと 発表 して解散するのなら、電撃 なことはないと思うが。発表自体が唐突だったのなら、解散を電撃発表 だろう。キャンディーズみたいなことをしたのか、と思った。

(14) 高岡早紀の事実婚夫 失踪告白

 これもなんだか、主述関係がよく分からん。失踪していた夫が出てきてその事情を告白した、という意味かと思ったが、実際は、高岡早紀さんが、事実婚している相手の夫が現在借金のため失踪(連絡のとれていない状態)しているなか、取材に応じて事情を語った、という内容だった。

(15) ニセ虎パーティーにアニキ怒

 プロ野球については関心も知識もないので、そもそも何の話か一見して分からなかった。ニセ虎 と読んでわたしが連想したのは、落語の「動物園」のネタだった。が、そういえば、阪神に アニキ という渾名の選手がいたな、と漠然と思い至り、もしかして野球関連の話で、 は阪神タイガースを指しているのか、と仮説した。
 これは流石に分かりにくいと思ったのか、同じニュースのタイトルが、翌日になると、以下のように修正されていた。

(15)’ 金本氏、偽イベントに「怒」

 タイガースの私設応援団が、本人の承諾なしに、イベントに金本さんが来るかのような宣伝をして人を集めていた、というような話であった。

(16) 監禁小屋 人相変わるほどやせ

 これも、以前に報じられた事件を知っているものとしたタイトルである。監禁小屋 とは、尼崎で発生した、複雑な監禁・脅迫事件のことである。半年くらい経ってから見ると、何だったかな、と思ってしまう。
 こういう、皆がよく知っている事件を三~五文字くらいでまとめるパターンでは、妙なイメージが喚起されることがある。亀岡暴走 なんてのも一時期よく見られ、これは何のことか読者も分かると思うが、祇園暴走 となると、わたしは着物の裾からげて爆走している舞妓さんとか、岸和田のだんじりのごとき勢いで祇園祭の山鉾が走っている映像とかが浮かんでしまう。

(17) デメリットだらけ? 結婚の誤解

 結婚に対して誤解することが損なのか、と思ったのだが、その誤解の内実が不明である。実際の意味は、そうでなくて、結婚はデメリットだらけと誤解されているが、実際には少なくとも経済的な観点から言えば結婚した方がメリットが大きい、という主旨の記事であった。
 しかし、結婚はデメリットだらけ、という誤解が多くなされている、ということがそれほど共通理解になっているだろうか。

(18) 少年と話した娘に酸かけ殺害

  という語は血のつながった女子という他に、単に年頃の女性、という意味でも使われるので分からなくなる。
 これは日本の話ではなく、パキスタンでの事件だそうだ。自宅の外で少年と話している自分の娘を見つけた両親が娘を「名誉殺人」して逮捕された、というのである。宗教的な背景が違うと理解しがたいが、戒律を破る行為をした者を、それ以上罪を重ねさせないように殺すことは、宗教的にはむしろ望ましいこととされるようだ。それを 名誉殺人 と呼ぶわけである。が、法律上は殺人罪に問われる。宗教と法治の矛盾である。

(19) 男性刺される 男が妹連れ逃走

 男性 と二人登場するが、 が付く方が幾分丁寧な呼称になるから、被害者の方に充てている。容疑者は素っ気なく と呼ばれる。
 一瞬分からなかったのは、 がどっちの? というところで、いやそんな、自分の妹を連れて他人を刺しに行って妹を連れたまま逃走する、なんてはずはないだろう、とは思うのだが、このごろの事件は何をするか分からんので、油断ならない。しかし記事を読んでみれば、これは 男性 の妹であった。 は交際していたが、それがもつれたのである。

(20) 登山家の栗城氏 指切断の代償

 連体修飾のいたずらである。指切断 に対する代償が何かあるのか、と思ったら、雪山登山を敢行したことの代償が、指切断 そのものだったのである。
 その後の続報によれば、栗城さんは切断手術を拒否し、指を存置したまま治療を試みているのだそうだ。ちょっと先走った報道になったわけだ。

 多分、まだこのシリーズは続く。

※ このカテゴリーの記事のように、まるよしの楽しい日本語の話を満載した本、ぜひお手に取ってお読みくださいね。

 『まるごと とれたて 日本語談義 -ラジオ番組『高専ライブ』で語ることばの話-』
 桐島周 2016 勝木書店 定価1500円(税込)
 
ISBN: 978-4-906485-09-3 
 (桐島周は、まるよしのペンネームです)

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  http://www.katsuki-books.jp/ (書籍検索から)
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