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2013年8月 9日 (金)

歳より若く見られるということ

 秋田内陸縦貫鉄道という第三セクターのローカル線に初めて乗った時のこと、平日の昼間なのに車内はけっこう込み合っていて、一ボックスに二人か三人ずつは坐っていた。わたしと対角線に坐ったのは話好きらしいおばちゃんだった。
 おばちゃんは通路を隔てたボックスの顔見知りらしい客と声高にしゃべりたおしていたが、その連れが阿仁合あたりで降りてしまうと、もう話し相手は誰でもよいのか、わたしに話しかけてきた。
 その言葉に、わたしはびっくり仰天した。

「にいちゃん、どこの高校行ってるの」 
 この素朴な田舎のおばちゃんは、透視術か読心術の持主なのか。ラフな格好で旅行しているわたしが、高校に勤めていることがなんで分かるのか。もう言わずとも教師の風格が出ているのか。
「へ?」
 と思わず訊き返したわたしに、おばちゃんは、
「今何年生?」
 と言う。わたしを高校生だと思っているらしいことが分かり、もう一度仰天した。

 子供の頃は身長が高かったせいもあって歳より上に見られたもので、その後も洒落っ気がなくもっさりした服装をすることが多かったためか、老けて見られることが多かった。
 それが、二十歳台半ばくらいからなぜか逆転し、歳より若く見られるようになった。見た目の老け方が鈍化したらしい。
 それで現在に至っているのだが、この時が実年齢と見られた年齢とのギャップの最高記録であった。
 
 そのギャップの大きさに、どうしていいか分からず、とりあえず言った。
「いえ、大学生です」
 広い意味で嘘ではない。大学院に籍を置いたまま、附属高校の講師を始めた年だったのだ。しかもわたしは大学受験で一浪している。
「大学の1年生? 2年生?」
「…4年生です」
 このへんで手を打たないと、説明しだすと大変だ。わたしは、大学院の4年次だった。修士論文は2年で書き上げていたのだが、敢えて提出せず、籍を置いていた。定職に就かないのなら、院生の肩書がある方が何かと好都合だったからである。
 
 もちろん、わたしが突出して若く見える人間だというわけではなかろう。近所に大学などない地域を走る鉄道だし、そういう所を平日の昼間に列車に乗って移動している若い者といえば、当然高校生だという先入観があってのことであろう。
 それにしても、今の職場に就いてからも、最初の二~三年は寮の食堂でおばちゃんに、
「お願いします」
 と言うと、
「…、先生、ですか?」
 と言われることが多かった。当時、舎監の教員には、検食用として寮生とは別の皿を出さねばならなかったのだ。
 私鉄の駅でバスの定期を買おうとして用務先に勤務先の学校名を書いて出したら、
「通学証明は?」
 と言われたこともあった。

 このごろはさすがにそんなことはなくなったが、依然実年齢より若く見られることが多い。教師に若さは強い武器なので、悪い気はしないのだが、逆にナメられることにもつながるし、これくらいの歳になってくると、逆に心と感性の若さを保つことの方が重要で困難であるようになってきた。
 精神だけは歳をとらないようにしたいものだ。

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