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2013年9月13日 (金)

ミュージカル『フットルース』富山公演(サッコ出演)

 以前から、サッコ(伊藤咲子) さんがミュージカルに初挑戦する、ということを記事でも紹介してきたのだが、いよいよそれを鑑賞する時が来た。
 米国でも有名なミュージカルである『フットルース』の富山公演が、去る8月30日、オーバードホールにて行われたのである。

 以下、文章の冗長を避け、役名・出演者名その他敬称略とします。ご諒承ください。

 わたしは、本格的なミュージカルを観るのは初めてである。以前、麻倉未稀 主演の舞台「モンテンルパの夜は更けて」を観たのを 記事にした が、あれは 渡辺はま子 のヒットナンバーばかりを配した音楽劇であり、本来の意味のミュージカルではない。

 富山駅のすぐ北側、再開発された駅裏のよくある感じである。現在のところ、表口との間は薄暗く清潔感のない地下道で結ばれているだけだが、新幹線開業に合わせて富山駅が高架化されれば、人通りが増えるだろう。オーバードホールは、前をLRTが横切る、お洒落な建物である。

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 正直なところ、北陸でどれだけ人が集まるのか、と危惧しないではなかったが、開場の頃にはもう沢山の人が列をなしていた。客層も老若男女幅広い。
 そのなかで、岐阜の隊員と顔を合わせた。あちこち公演を追っかけている隊員も多いと聞くが、さすがに富山となると、参加はこの二人だけのようである。
 配役表を撮ったり、パンフレットを買ったりする。パンフレットには出演者の紹介とアンケートが載っていて、わたしに気を遣ったわけではないと思うが、サッコ が五教科のうち国語がいちばん好きだったことが分かって、気をよくする。
 せっかくだから、とS席をとったのに、場内に入ってみると、ずいぶん後ろの方の席だった。まあ、中央に近いから見易くはあるのだが。それに、PAの直前なので、いい音響で聴けそうである。

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 主人公 レン(小野田龍之介)を中心とした大編成のダンス(「フットルース」)で開幕する。大都会シカゴでの楽しい生活の象徴である。親の都合で田舎町に引っ越すことになったという設定なので、早くも母 エセル伊藤咲子が登場し、レン とのやりとりがある。
 ダンスをはじめ、若者が楽しみを見いだしそうなことが、悉く法律で禁止されている田舎町で窮屈な思いをしつつ反撥を強めていく レン である。エセル も最初のうちはおろおろと事なきを望む心配性の母親なのだが、次第に息子の思いを理解し、力強く励ますようになっていく。
 町を実質的に仕切っている権力者でもある牧師の ショウ(川﨑麻世)と優しい妻 ヴァイ(川島なお美)の小さな諍いの後、ヴァイ がやりきれなさを独唱しているところに エセル も加わってきて、綺麗な女声デュエットになる。
 伊藤咲子 川島なお美 が一緒に歌ってるよ、なんてそれだけでちょっと感動する。この感動は、鈴鹿ひろ美 天野春子 の顔合わせないし直接対決に感じたのとも似たものである。

 『フットルース』のナンバーのなかで、日本で最も知られているのは、麻倉美稀 のカバーで大ヒットした「ヒーロー」であろう。これは、一幕の中ほどで歌われる。サッコ も最新のアルバムでカバーしているので、エセル が歌うのかと思っていたら、そうではなくて、レンの相手役となるクラスメートの アリエル(星野真衣)と三人の女友達が歌うのであった。ひときわ拍手が大きくなる。
 この女友達の一人に早口の ラスティ がいるが、演じるのは元AKB48の 増田有華 である。早口の長科白を詰まりもせず何とも可愛らしく演じていて、稽古が行き届いていることを感じさせる。観客に若い男性が少なくないのは、この人が出演するからでもあろう。
 レン が友人たちに、この町でダンスをできるようにする運動を呼びかけ、皆が呼応するところで一幕が終わる。

 いろんな都合があるのだとは思うが、わたしは劇の途中の休憩というのは好まない。ずっとその虚構世界に浸っていたいのである。だから、席を立たずになるべく俯いていた。
 しかし、薄く照明の点いた客席はどうしても目に入る。客は少なくはないが、かなり大きいホールだからか、席が埋まりきってはいないようである。わたしの右隣も空席である。おかげで楽に観劇できる。

 
 二幕の初めは、参考のためにと レン が友人たちを連れてきた隣町のダンスホールで、ここの女将が アイリーン伊藤咲子・二役である。ちょっと酔っぱらった感じで思いっきり声を張って歌う姿に、初めて堪能できた サッコ 節であった。場面も、サッコ にぴったりの、ひたすら陽気な酒とダンスの巷である。
 サッコ の出番が多くなるのはわたしには好ましいことなのだが、エセル アイリーン が二役である劇上の必然性が、わたしには観ていてもよく分からなかった。力強いナンバーを歌いこなせるだけの力をもつ年相応の役者が不足しているのであろうか。

 さて、田舎町で レン の親友ともなったのが、ラスティ の幼馴染みでもある ウィラード吉田要士)である。垢抜けず間の抜けた愚鈍な、しかしどこか憎めないキャラに、観客のなかには、レンよりもむしろ ウィラード にこそすっかり感情移入してしまっている人も多い。わたしもそうであった。
 そういう客の喝を満たすように、ラスティ ウィラード の隠れた魅力を語る「私のロミオ」が歌い上げられる。
 さらには ウィラード が中心となって五人の男子生徒が歌う「ママの教え」が、この劇いちばんの笑いどころを作ってくれる。ウィラード のママは、すこぶる巨大な頭で登場し、わたしはまた 末成由美 が出てきたのかと思ったが、これは被り物なのであった。被っている役者は多分男性である。さらに末成由美が五人に増殖し、息子たちにわけの分からぬ教訓を授ける。
 この ウィラード という役、相当な技倆が必要なことは、素人にも分かる。大阪あたりだと、ここで笑いや拍手がもっと大きいだろうなあ、と想像すると、わたしもあちこち追っかけてみたかったとも思う。各地方のリアクションを比較するのも面白そうだ。

 ヴァイ の切なくもおおらかな独唱「世界でひとつの」や、レン アリエル が互いの思いを確かめ合う二重唱「パラダイス」と、聴かせどころが続き、やがて レン の思いが ショウ を動かす。
 ショウ の一人語りによる懺悔と啓示の場面は、息を呑むほどの迫力である。二十秒ほども黙ったまま顔を伏せて動じないのは、科白が出てこなくなったのか、体調でも悪くなったのか、と心配になるほどだが、それも計算された「間」であることが、やがてその演技から分かる。

 そして大団円の総踊り。溌剌たる高校生たちはもちろんのこと、彼らを抑圧してきた教師たちや町の大人、そして ショウ ヴァイ までもダンスを見せる。あんな厳格で悩み多かった ショウ があんなに足上げて踊れたんだ、と驚いてしまうが、そりゃ 川﨑麻世 だもんなあ、と我に返る。
 それほどまで激しくはないにせよ、サッコ もこの輪のなかで、ダンスを披露してくれる。普段のステージでも、けっこう振りを入れて歌ってくれるのだが、それとは格段に違う、全身表現である。
 さらに、このエンディングのなかでは、「ヒーロー」の再唱もあり、ここでリードボーカルをとったのが サッコ だった。『フットルース』の前回のツアーのときに エセル 役だったのは、誰あろう 麻倉美稀 である。だから日本の観客へのサービスとして 麻倉美稀 の「ヒーロー」独唱が付加されていたのだろう。
 それをも サッコ に引き継いでくれたのは嬉しい。伊藤咲子 の歌唱力に信頼がおかれているということなのだろうし、歌手・伊藤咲子 の見せ場があって、よかった。「ヒーロー」はCDで聴いて満足していてはいけない。この舞台で聴いてこその「ヒーロー」だ、とわたしには思えた。

 とにかく、この賑やかなエンディングが物語るように、あくまで歌って踊ってきらびやか、恋もあり笑いもあり、というわけで、ミュージカルのお手本のようなミュージカルとして、大いに満足できた。
 そこに サッコ の出番までふんだんに用意されていた、となれば、わたしの初ミュージカルとして言うことなしだ。

 何度ものカーテンコールで出演者と観客の交歓が続き、立ち上がる客がだんだん多くなる。
 岐阜の隊員は前の方の席で比較的早く立っていたので、いち早く サッコ に見つけてもらっていたが、わたしは後ろすぎて多分見えなかったろう。わたしの前には立っている人はいなかったし、視界はきいたと思うが。右手に白い手袋、と事前に伝えておけばよかったか。
 サッコ 自身も二列めにいるので、なかなか視線は合わない。それどころか、アリエル の影になって姿を見失いがちになるので、必死で追う。何だか、娘の発表会を見に来た親のような気分になってきた。

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 ミュージカルの舞台を見て、一念発起、現職もキャリアもかなぐり捨ててミュージカル俳優を志す人も少なくない、と聞く。その気持ちは分からないではない。
 どんな仕事にも厳しさとやりがいはあることだろうが、ミュージカル出演というのは、

1.思い切り体を動かし声を出すことで、心の澱のようなものが発散できる。
2.汗をかく共同作業であるだけに、終わったときの充実感は桁外れである。
3.ワンステージ務めるだけで消耗し、ダイエットにもよい。

 などのメリットがあることが想像される。それだけに、これは鑑賞すれば誰もが自分でやってみたくなるのだろう。
 ひまわり隊で、サッコナンバーを駆使したミュージカルを、バスツアーの座敷で上演するのも面白いかもしれない。

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コメント

まるよしさん、その節はお世話になりました。
名古屋、大阪公演の会場に比べてオーバードホールはミュージカル公演にはちょっと広すぎる感じですね。
カーテンコールも盛り上がりのタイミングがちょっとおとなしめでした。
今回、サッコさんの初々しい初演と円熟した終演に近いミュージカルを両方を鑑賞できる地区に住んでいてよかったです。

投稿: 多和田 | 2013年9月13日 (金) 22時39分

 その節はありがとうございました。

投稿: まるよし | 2013年9月13日 (金) 22時54分

まるよしさん、
文章力のみならず、観察力、洞察力、いろいろいつも脱帽しちゃいます。
とにかく、サッコのミュージカル出演は嬉しかった。
サッコにミュージカルの舞台に立ってもらうのがサッコファンとしての私の長年の夢でもあったから。
初日も、千龝楽も、嬉しくて感極まって泣いちゃったほど。
サッコには、フットルースのような、いい仕事を、してほしいと願います。
行けなかった、富山公演の詳細、ありがとうございます♪(´ε` )

投稿: KAZUKO | 2013年9月26日 (木) 21時11分

●KAZUKOさん
 サッコの、いつものライブとはちょっと違う、緊張気味の、しかしのびのびと歌い演技する姿が、とても新鮮でした。できればまた『フットルース』を再演してほしいし、他のミュージカルにも出演してほしいですね。

投稿: まるよし | 2013年9月26日 (木) 21時42分

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