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2014年2月 4日 (火)

言を憎んで箱を憎まず

 高校生の年齢の学生を教えていると、職場でよく聞くのがLINEの弊害というやつである。授業中スマホを預かったり、LINEの使用を制限したりしてはどうか、という話が折にふれて出る。
 学生同士のやりとりが陰にこもってしまい、下手をするといじめの温床になり得る。そういうことは分かる。

 しかし、これまでもいろんなメディアやアイテムについて言われてきたこういう論法について、わたしは違和感をおぼえる。

 何か情報をやりとりした結果、社会的にまずいことが起きてしまった場合、問題があるのはその情報の中身だと思うのだが、なぜか批判はいつもメディアやアイテムに向かってしまう。これがわたしにはよく理解できないのである。
 包丁で人を刺殺する事件が起きたからといって、包丁を批判する人は少ない。使い途が間違っていた、と考えるのが普通だろう。

 最近はさすがに聞かないが、一時期、「テレビを見せずに子供を育てた」と語る親がよくいた。けっこう社会的地位の高い人でも、そういうことを言っていたものである。
 そうするとわたしは、このお嬢さんは、『北の国から』で泣いたこともなければ『フランダースの犬』のあのラストシーンも観なかったんだなあ、と気の毒に思ったのである。
 いや、そんな情操教育なら本を読ませれば十分だ、という考えもあろう。しかし、ことばを専門に研究しているからこそ実感するのだが、ことばによる伝達力にはおのずと限界がある。ことばだけからいろんな想像を拡げることにも一定の意義はあるのだが、映像による感動をカバーするには至らないのである。それとも、映像作品はいちいち映画館に連れて行って観せたのだろうか。パソコンも家庭用ビデオも普及していなかった時代に。
 テレビ番組に、低俗なものや安易なものが少なくないのは事実である。しかし、テレビだからこそ得られる情感や教養もまた多いのである。それらを全て遮断するのが子供のためになるとは、どうしても思えないのだ。わたしが既に家庭にあたりまえにテレビがある時代になって育った世代だからそう思うのだろうか。
 国語で古典文学を学ぶ一つの目的は、世界に誇ることのできる自国の文化に触れることだと思うが、アニメに代表される映像作品も、現代の日本を代表し象徴する文化の一つだろう。そういうものを知るのは大切なことではないかと思う。
 要するに、メディアを否定するのではなく、コンテンツを選択することこそが大事なのだ。テレビはチャンネルを換えることもできるし、スイッチを切ることもできる。

 電子メール、電子掲示板、mixi、Twitter、…、いろんなメディアやアイテムが出てきて流行するたびに、その弊害がささやかれ、批判されてきた。流行が落ち着くと、誰も何も言わなくなる。
 これもわたしは、そこを流れる情報の内容と表現に問題があるのであって、メディアやアイテムに問題があるわけではないと思うのだ(逆に言うと、だからこそアイテムが取って代わっても、同じ問題が繰返し起きるのである。こういうのは、いたちごっことはまた違う)。
「彼を監視するアプリ」だったか、ああいうそれ自体に問題があるアイテムも時には出てくるが、そういうものは早期に淘汰される。

 LINEも同じことではないのだろうか。いじめとか何とかはもちろんよろしくないのだが、そんな使い方だけではないだろう。
 学生は、クラスの話し合いにLINEを活用している。特別活動のクラス討議の根回しを前夜にLINEでやったりしているのである。それ自体も是非の論はあるかもしれないが、うまく使いこなしているものだと思う。
 クラスの学生の家に不幸があったとき、折悪しくインフルエンザのため学級閉鎖の最中だったのだが、LINEで即時に連絡が回り、香奠を集める段取りを有志がやってくれたりもした。それは、電話やメールでは難しかったであろう。
 こういうのを見ると、つくづくコンテンツの問題だ、と思う。ひとを貶めたり傷つけたりすることにことばを使うものではない、という基本をしっかり身につけさせることこそが、遠回りに見えて最も確実な教育ではないか、と思っている。
 LINEにアイテムとしての問題があるとすれば、一時期喧しく警告された、電話帳ごと吸い上げられてしまう危険性などであろう。しかし最近はそういうのも聞かなくなった。問題が解決されたのか、LINEがないともはや回らない世の中になったので目を瞑っているのか、よく分からない。

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