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2014年3月 4日 (火)

『ごちそうさん』の絶妙な時代感を愉しむ

 連続テレビ小説『ごちそうさん』も終盤に向かおうというところである。
 大阪の空襲が始まり、生まれたばかりのやや子を抱えて一家が逃げまどう、というのが昨日今日の話だ。皆が地下鉄の駅に逃げ込み、職員らの機転で未明にもかかわらず電車を動かして避難民を救った。
 これは実話に基づくエピソードだそうだが、鉄道とその施設が人命を救うに役立った、というのは、わたしのような鉄道好きにとってはすこぶる胸打たれる話であり、観ていて涙が出た。

 そして、前記事からの間にも、やはり『ちりとてちん』に通じる要素が認められた。

 その最たるものは、西門め以子 が、夫 悠太郎 の浮気を疑い、その相手である 悠太郎 の幼なじみの所に乗り込んだら逆襲されて落ち込み、部屋に引きこもってしまう、という場面である。
 食事にも出て来ない め以子 だが、心配した子供らが部屋の前におむすびを置いておくと、いつの間にか無くなっている。
 これは、喜代美 の子供時代、祖父 正太郎 の死にショックを受けて、塗り箸の作業場にこもって泣き続けた時と同じである。やはり、糸子 がおにぎりを置いておくと無くなるのである。

 そして、このギャグのルーツは、『サザエさん』にある。カツオ波平 に叱られて、子供部屋にこもって泣いているときのものなのだ。
 そう思ってみると、『ごちそうさん』の西門家は、『サザエさん』の磯野家と似たところがある。
 家族構成は異なるけれど、子供は男児二人と女児一人がいる。そして悠太郎の妹 希子 は結婚して川久保姓になったが、その夫 川久保 とともに西門家に同居している。子供らには魚に因んだ名前が付けられている。め以子 の髪形もどこか サザエ に通じる。
 『サザエさん』をも準拠枠として意識しているのだろうか。

 この他、め以子 ら馴染の喫茶店「うま介」で出す戦時メニュー(青汁のような飲物)が、草を使うところから徒然草からの連想で、「よしだ汁」と名づけられたところ、あるいは、め以子の娘 ふ久 が出産の苦しさを紛らわせるために唱えているのが円周率だったりする笑いどころなども、ちょっとした『ちりとてちん』へのリスペクトのような気がする。草原 役だった桂吉弥さんも、今週は出演するようである。
 吉田兼好のものした徒然草は、もちろん草若一門の屋号たる「徒然亭」の由来であり、徒然亭草若 の本名は吉田という名字であった。
 また、喜代美の父 正典 は子供時代円周率の暗誦が特技だった、という設定であり、劇中いろいろなところに円周率の数字が折り込まれたのである。『ごちそうさん』のその部分の脚本が書かれたのは、STAP細胞を開発した小保方晴子氏が注目されるはるか以前だったはずで、ふ久悠太郎 の血を引いたリケジョとして描いたのは、偶然ながらすばらしい巡り合わせである。
 前向きで行動的な め以子 と冷静な理系男子の 悠太郎 との夫婦を見ていると、時代はちがうけれど、『Q.E.D.証明終了』の 可奈 がゆくゆく結婚したら、こんな感じになるのかな、という気になる。  

 『ごちそうさん』は背景となる時代はきちんと考証しているのだろうが、科白などになると、かなり現代風で、『カーネーション』の時と同じく、「現代大阪弁訳」で語られているようである。明らかにその当時には存在しなかったはずの言い回しが平気で使われている(「ないわ~」など)。
 エピソードもそうで、例えば結婚後も長らく祝言を挙げていなかった 悠太郎め以子 に、希子 が企画したサプライズ結婚式がプレゼントされたが、これなど現代のバラエティー番組の発想である。そんなものが当時あり得たとは思えないが、「もし戦前にサプライズ結婚式があったらこうなるだろう」という遊びを見せられている気がする。

 戦時下、入手できる食材の量も種類も乏しくなっていくなか、いかに「ごちそう」を作るか、という め以子 の課題はだんだん難易度が高くなっていく。極端に制限された環境のなか、め以子 がその才覚で課題を解決していくさまが心地よい。『JIN ~仁』における医療行為とも似てくる。
 『ごちそうさん』の最初の場面は、空襲で焼け野原となった大阪で、め以子 が露天で子供たちに雑炊のようなものを振る舞っている場面であった。間もなくそこまで話が進みそうな気配だが、最終的にいつの年代までを描くのか分からない。本当の生活難は戦中よりも戦後だったと聞く。
 ともあれ、今後も目が離せない。 

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