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2014年4月29日 (火)

元号に使われた漢字 下~ ランキング発表

(「元号に使われた漢字 上~ 元号に親しむ」からつづく) 

 最初の元号 大化 から 平成 まで、歴代の元号は247ある、というのが定説のようである。南北朝に分かれていた時代があったり、公式のものかどうか解釈の分かれる改元があったりして、説はいろいろだが、一応定説を採る。

 手作業であるため、数え間違いもあるかもしれない。誤りなどお気づきの点はご教示いただければ幸いである。
 そのうえで、漢字ランキング、ベストテンを逆順で発表する。

 第10位 安 (17回)

 天安(857~)から始まり、江戸時代末期の 安政 まで使われている。

 次はいきなり四字が同率で並ぶ。

 第6位 和 長 正 文 (初出順・各19回)

  は最古のコインである「和同開珎」でも知られる 和銅(708~)で初出している。平城京遷都が 和銅 期だから、かなり古い元号である。最近ではもちろん 昭和 だから、ベストテンの文字のなかでも、最も息の長い使われようをしている字である。
 天長(834~)が初出だが、これは江戸時代に入ってからは使われていない。ながい と訓みはするが、この字だと物理的な長さをイメージするようになってきたのであろうか。
 正暦(990~)で初出して 大正 まで使われている。
 文治(1185~)が初出である。平家が壇の浦で滅亡した直後に改元されたものであるから、平安と鎌倉の境目ということになり、ベストテンの漢字のなかでは、最も新しい初出である。江戸時代に文化・文政と続けて使われ(いわゆる「化政文化」の時代)たことでも知られる。

 第5位  (20回)

 天応(781~)で初出、室町時代の 応仁(「応仁の乱」)などで知られる。最近では 慶応 に使われた。 

 第4位  (21回)

 治安(1021~)で初出、平治(源平合戦の「平治の乱」)などで知られる。最近では 明治 に使われた。

 2位の字は同率で二つ並ぶ。

 第2位 天 元 (初出順・27回)

  は、奈良時代の 天平(729~)に始まる。さらに「天平●●」という四文字の元号がいくつか続いたりした。江戸時代の 天保(「天保の改革」)まで使われている。天皇の諡号にもよく使われる字であることは、言うまでもない。ラジオの時、ゲストに来てもらった同僚の歴史教員は、この字が最多ではないか、と予想してくれた。かなりいい線である。
  は、元慶(877~)で初出、江戸時代の 元禄 などでもおなじみである。最新は江戸時代末期の 元治、これは 慶応 の一つ前の元号だ。
 それにしても、247の元号のうち一割を超える27回も使われているのだから、両字ともけっこうな頻度と言えよう。

 それを抑えて29回も使われているトップの字がこれである。

 第1位  (29回)

 意外に地味な字だったな、という感じだが、確かに国の末長い隆盛を願うと、この字が多用されることになるのだろう。
 永観(983~)で使われたのが最初なので、これもまたベストテンのなかでは比較的新しい初出である。その後の、文永(蒙古襲来の「文永の役」)、江戸時代の 宝永(富士山が大噴火した時)などで知られる。
  の字が使われている29の元号を、以下に列挙しておく。

永観・永延・永祚・永承・永保・永長天永元永・永久・永治・永暦・永万・寿永・建永・貞永・文永(「文永の役」)・永仁(「永仁の徳政令」)・康永・永和・永徳・応永(「応永の乱」)・永享・永正・大永・永禄・寛永(「寛永の大飢饉」)・宝永(「宝永の大地震」「宝永大噴火」)安永・嘉永

 たくさん並んだ割には、歴史上のイベントに名付けられるようなメジャーな元号が少ない。ということは、平穏な時代が多かった、という証左であり、従ってこれにあやかってまた似たような名の元号にしよう、という動きになり、くり返し使われるわけであろう。
 そういうわけで、上のリストにて赤太字で示したように、ベストテン入りした他の九文字全てと組み合わされて元号に使われている、というのも、 の字の特徴である。

 いかがであろうか。もっていた印象と合っていた方もそうでない方もいると思うが、何かの参考くらいにはなるだろう。

 では、11位から20位までをまとめて発表しておく。

第11位 延 暦 (初出順・16回)
第13位
 寛 徳 保 (初出順・15回)
第16位
  (14回)
第17位
  (13回)
第18位
 平 嘉 (初出順・12回)
第20位
 宝 康 (初出順・10回)

 ラジオでアシスタントを務めてくれていた学生が予想した多出字は であった。この字が入った元号というと、知られているのは江戸時代の 寛政(松平定信の「寛政の改革」)くらいなので、なぜ彼がこれを挙げたのかは分からない。それでも13位だから、いいところを衝いたとは言えるだろう。
 なお、彼がこの字を説明する時に、「間寛平(はざまかんぺい) さんの 」 と言った。なんでその例なのか、寛大 とか 寛容 とかいろいろ熟語があるだろうに、と思ったが、実はそのまま 寛平 という元号もあったのである。訓み方が かんぺい だったのか かんぴょう だったのか、定かでない。後者の訓み方の方が一般的であるようだ。菅原道真の全盛期がこの時代で、遣唐使の廃止などがなされた。
 なお、先の第1位 の字との組み合わせでみると、11位~20位でも、実に十文字中九文字もが、やはり とコンビを組んでいるのである。 と組み合わされていないのは、第18位の のみである。元号というのは似たようなものが多くなっていると、よく分かることである。

 そして、それ以下の少数回の字は、回数ごとにまとめておく。字の順序はいずれも初出順である。

9回 慶 久 建
8回 弘 貞 享
7回 禄 明 
6回 
5回 
4回 寿 万
3回 化 養 神 観 喜 中 政  
2回 雲 護

 大寿 などはイメージがいいので、もっと使われていてもよさそうな感じである。
  が5回も使われているのは、面白い。亀は時代にかかわらず、長寿を象徴する動物だったのであろう。そのわりに は一度も使われていないが。

 最後に、一度きりしか使われたことのない漢字を列挙しておく。    

白 雉 朱 鳥 銅 霊 老 感 勝 字 景 同 祥 斉 衡 昌 泰 祚 福 禎 乾 亨 武 興 国 授 至 吉 昭 成  (初出順)

 吉・福、それに などという縁起のよさそうな字がならんでいるが、出番があまりなかったようだ。
  とか とか …、他にもイメージのいい字はいろいろ挙げられるが、それは現代の感覚なのかもしれない。漢籍になければ元号には採られない。

 こんなふうに元号をみるのも、なかなか面白いものである。いろんな専攻の人が考察を深めれば、まだまだいろいろなことが言えそうだが、それは読者諸賢にお任せするとして、わたしはここにデータを提供するに留める。

(了)

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