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2014年5月20日 (火)

ミュージカル『ホンク!』(サッコ出演)下

「ミュージカル『ホンク!』(サッコ出演)中」 よりつづく)

 このトークショーこそが、この日に観劇して得をした、と思える要素なのだが、それだけではない。なぜこの日にトークショーがあるか、というと、アグリィ 役のダブルキャストであるキム スンラ KAZZ の両方が出演する貴重な日だったからである。これに サッコ を加えた三人が、三波 の司会で愉しいトークを聞かせてくれる。
 周囲の反応を見ていると、三波サッコ に「ひまわり娘」や『スター誕生』の話を振ってくれたおかげで、初めてあの元アイドルの 伊藤咲子 だ、ということに気づいた人も少なくないようであった。デビューから四十年経つ、と聞いて、え、じゃ歳いくつなの? と顔を見合わせる人もいる。どっちの意味で驚いたのだろう。
 劇もトークショーも、貴重な回を鑑賞できたことになる。

 ロビーで皆さんと少々感想など交換する。

 無粋なので先のようなわたしの疑問点までは口にしなかったが、わたしは他の方ほど入り込めなかった感じだ。
 ロビーは狭いため、各出演者のファンや関係者がそこここに集まっていて、かなりごった返している。あの人は役者仲間なんだろうな、というのは見て分かる。やはりひとに見られることに馴れている人は、どこか顔つきが違うし、姿勢もいい。やがて出演者も出てきて、記念撮影したりしている。サッコ のお出ましは今日はなし、ふれあいタイムは明日の開演前に、という話であった。

 宿に引き上げて、まだいろいろ考えつづけた。
 全体が喜劇仕立てなのだから、難しく考える必要はないのかもしれない。アグリィ の「許すよ!」は、キャット にさえ向けられているもの、と考えるべきなのだろう。
 アヒル広場の連中に制裁を加えようとすると、結局白鳥の高貴な身分を強調せざるを得なくなるので、劇のテーマと矛盾してしまう。だからあのように収束するしかなかったのかな、と思えてきた。
 ただ、それならやはり、キャット も赦され、ともに大団円に加わって欲しかった気がする。少なくともわたしとしては、キャット よりもアヒル広場の面々に対する嫌悪感の方が、今もって強く残っている。

 翌20日日曜日は、正午に開演する公演を観た。この日からは、オバマ大統領来日に備えて駅のコインロッカーが軒並み使用停止となっていたため、ホテルをチェックアウトしたわたしは、キャリーバッグを引いて博品館へ行かねばならなかった。この荷物をどうしようかと思っていたが、幸い受付で預かってくれた。
 開場の十一時半に入場したが、実は日曜十一時台は、わたし自身が出演するラジオ番組の放送があり、それをチェックする必要がある。それで、スマホで受信しながらイヤホンでモニターして開演を待つ。
 ひまわり隊の皆さんとも挨拶を交わすが、イヤホンを付けたままで大変失礼なことであった。仕事上やむを得ぬこととは言え、この場を借り、改めてお詫び申し上げたい。

 そして参加予定者が揃ったところで、マネージャーさんに招じ入れられ、一同楽屋の廊下にお邪魔する。非常に狭い廊下に固まっていたので、他の出演者の方の出入りにも支障してしまった感じだが、役者の皆さんは慣れっこなのか、にこやかにわたしたちに挨拶しながら往来してくれる。
 実は、この4月20日は、サッコ のデビュー四十周年の記念日に当たるのである。そういう特別な日をミュージカルの本番で迎えられたのは、サッコ の歌手人生にとってもすこぶるめでたいことである。
 熱心な隊員の方が、「伊藤咲子 祝 デビュー40周年」の文字が書かれた黄色の大段幕を用意してくれた。それを広げて、早くも アイダ の衣裳とメイクを纏ったサッコを中心に、記念撮影する。その写真はここに出すことはできないが、伊藤咲子ファンクラブのFacebookページに掲揚されている。
 そして、一人ひとりが サッコ と握手と言葉を交わす。サッコ はわたしに、
「昨日も来てくれてたでしょ? 見えたわよ舞台から」
 と言ってくれる。
 『フットルース』の記事の時に、舞台の サッコ となかなか目が合わず残念だった、という趣旨のことを書いたのを覚えていてくれたのだろう。こういう記憶力と気遣いが、サッコ の真骨頂である。
 おかげで、気分よく会場に入ることができた。

 今日の席は、なんと最前列であった。他の隊員の方は中ほどに並んでいたのだが、わたし一人離れている。まだまだ新しいマネージャーさんに隊員として認知されていないのだろう。遠隔地のハンデはあるが、精々ライブなどを観に行かないといけないだろう。
 日曜昼間だからか、客の入りも昨夜よりかなりいいようである。ギャグの反応も鋭いが、子供連れがいたりするので、私語がちょっと気になる。

 昨日と違って、今日の アグリィ 役は KAZZ である。キム はすらりとした感じがあるので、うどの大木的な「みにくさ」がよく出ていたし、何より白鳥の姿になったときの映え方がすばらしかった。対する KAZZ の場合は、みにくいアヒルの野暮ったさがよりしっくりときた。赤ちゃんっぽい視線の使い方などに感服したし、おどおどととまどいながら世界を、そして他人の間を歩く姿が、孤独さを際立たせた。そんな二様の アグリィ を見比べられたのは幸せだ。また、この日の ブルフロッグ 役は 嶋本秀明 となる。いずれのダブルキャストも,、衣裳が微妙に異なっている。 
 ストーリーや科白は、もちろん昨日と同じなのだが、細かな違いから、あそこはアドリブだったのか、と悟ったりする。
 また、昨日漠然と観ていたので、よく分からなかったところも見直し、聞き直すことができるので、二回続けて観るのもいいものである。吹雪の中で、キャット がいつの間に氷に埋まった状態にスタンバイしたのか、二回めでよく分かった。また、デンブリンクィニー が好んで観ているテレビ番組の題名も聞き逃していたのだが、これも『水戸コーチン』であることが分かる。

 最前列ならではの醍醐味もあった。
 本番中の役者の顔には、これほど汗が浮いているのだなあ、と演技が重労働であることを悟らせてくれる。歌って踊って科白を言って、それをライトを浴びながらやっているのだ。どうかすると汗のしぶきが席まで飛んできそうである。アグリィ はときに舞台下、つまりわたしの席の直前に下りて来たりするので、邪魔にならぬよう、バッグを足許に引いておかねばならない。反面、アグリィ キャット の客席通路における演技は、振り向かねば観ることができないうえ、わたしたちまでスポットライトを浴びてしまって何も見えなくなったりする。が、それも最前列の役得に思える。
 舞台上を具に観察できるのもよい。脇や後方にいる役者の細かい動きや表情も全て分かり、演出がより正確に伝わってくる。
 細かいところでは、序盤で卵に見立てた傘が舞台奥に置かれているのだが、その傘の先端に、小さな鶏卵大の白い飾りが付けてある洒落にも気づく。
 さらに、アイダ の持つ旅行鞄の裏側にいろいろ旅行記念? のステッカーが貼ってあるのだが、その文字も読め、そこにも小ネタが仕込まれていることが分かる。「タマゴニュータウン」「博玉子ラーメン」「あ飛る騨高山」などの文字を読み取ることができた。

 昨日の宿で、劇の解釈についてはかなり頭の中で整理したので、まずは素直にストーリーを愉しむことができた。
 そして、今日はトークショーはないが、カーテンコール時に軽いやりとりがあった。そして、サッコ 四十周年当日ということで、進行役の 三波 がひまわり隊のことまで紹介してくれ、後列の方でさきほどの大段幕を広げていた隊員の方に会場全体の注視と拍手とを集めた。格別の配慮、ありがたいことである。
 ミュージカルにおいて、ストーリーが完結してカーテンコールに移るときの、舞台と客席、虚構と現実の障壁が次第に崩れていくあの浮遊感覚は、何ものによっても替えがたいものである。生でミュージカルを観ることを、これからもやめられそうにない所以だ。
 そのためにも、これからも サッコ にはぜひミュージカルに出演しつづけてほしい、と願っている。

 『ホンク!』の関係者の皆様、ほんとうにお疲れさまでした。ありがとう。

(了)

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