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2014年8月 5日 (火)

誤読しそうになったニュースタイトル(4)

 メモしてあったニュースタイトルから日本語の文法や語用を考えるシリーズも四記事めとなった。31~40件めを検討していく。

(31) 大物の息子いじめ報復で殺害か

 殺害されたのは 大物の息子 なのだろうか。親の威光をいいことに余所の子をいじめたことの報復で、殺されたのか。だとしたら、殺した側の行く末が案じられる。
 だが実際は、メキシコの麻薬組織の大物の息子をいじめた少年が、殺害され埋められた遺体となって見つかった という事件であった。大物の息子 と知っていていじめたのかどうか分からないが、それで命を落とすとは。
 

(32) 下敷きで車破壊母子死亡

 下敷きで車破壊 と言われると、小学生の集団が下敷きを武器にして車に群がり、クルマを傷めつけている図が浮かんでしまう。
 しかしこれは、何の下敷きなのかを書く字数がなかったためのいたずらで、クルマがトレーラーと衝突、転倒したトレーラーの下敷きになって、乗っていた母子が死亡した、という何とも痛ましい事故であった。

(33) 3階から車飛び出す、主婦軽傷

 俳句のようなタイトルである。
 主婦 はどこにいた人なのだろうか。何の3階なのか分からないからイメージが浮かばなかったが、立体駐車場から飛び出したクルマを運転していたのが主婦で、運転操作を誤ったらしい。軽傷で済んだのは幸運であった。

(34) ストーカー警戒中に刺され重傷

 重傷 を負ったのは誰なのだろう。刺したのは誰なのだろう。

 a ストーカーの警戒にあたっていた警官の目の前で、堪えかねたストーカー被害者がストーカーを刺した。

 b 警官に警戒されていたためにターゲット(被害者)に近づけずうろうろしていたストーカーが、誰か第三者に刺された。

 c ストーカーの警戒にあたっていた警官を、逆恨みしたストーカーが刺した。

 d 警官が警戒にあたっていたのに、被害者がストーカーに刺されてしまった。

 といずれの可能性もあるタイトルで、わたしはcかと思ったのだが、実際にはdであった。被害者が気の毒である。

 

(35) 臓器写真を投稿の学生  退学に

 これは、これまでにもあった、以前のニュースを踏まえないと分からないタイトルの一つで、看護学生が、授業で用いた患者の臓器を写真に撮ってSNSに投稿した、という問題の続報だが、問題はそこにあるのではない。
 退学に を付けると、退学処分のように読めてしまう。が、ニュースを見ると単に、退学した、とあるだけである。おそらく、実質は退学処分のところ、看護学校側が学生の将来を考えて、自主退学を促すかたちにしたのであろう。よくある配慮である。
 その配慮が骨抜きとなるタイトルだ。は取ってほしかった。一字のあるなしで印象が変わる。

 

(36) 陸上ゲイ禁止薬物に陽性反応

 ゲイ が選手の名前だと分からなかった。
 陸上競技では同性愛を禁止しているのか? 同性愛者かどうかを判別する薬があって検査を受けるのか?  今どき同性愛に対してそこまでひどい扱いをしているのか?
 と思ったが、そんなはずもない。あるいは、陸上ゲイ と言えば分かるほど有名な同性愛の陸上選手がいるのか?  それにしてもその言い方はないだろう、とも思った。ら、同じニュースで別の社から配信された記事のタイトルはこうであった。

(36)' Tゲイが薬物陽性  世陸出場なし

 これの方が分かりやすいが、世界陸上 世陸 で通じるんだな。

 

(37) 産休報道に批判  酷すぎと話題

 産休報道 される以上は、それなりの有名人なのだろうし、おめでたい話なのに、なんでその報道が 酷すぎ 批判 されなければならないのか。子供が生まれる、ということ自体、プライバシーとして侵してはならない情報になったのか。安藤美姫さんも知らない間に子供産んでたしな。
 と思ったら全然違って、女性タレントが産休に入るという『Yahoo!  ニュース』の記事に対するコメントが、このタレントに対する悪口雑言に満ちている、ということであった。その悪口雑言を 批判 と呼んでいるのだが、記事を読んでみても、とても 批判 などと呼べる代物ではない。非建設的で無根拠な厭味や中傷ばかりである。その内容があまりにひどい、と嘆息したり窘めたりする人もいることが、話題になっているのだ。
 批判 の意味を広くとらねば解釈できなかったわけである。が、二字であらわすにはそれしかなかったか。

 

(38) 「缶詰ブームの高級化」を分析

 ブーム高級化 などしないだろう。高級化 したのは缶詰の中身である。
 だしまきや松阪牛の缶詰まで出ているそうなのであるが、それなら「缶詰高級化志向ブーム」ではないのだろうか。いや、そもそも世が 缶詰ブーム だったことをわたしは知らなかった。

 

(39) NHK外来語多用に同意

 これも前に伝えられていたニュースをふまえたタイトルである。
 NHKに対して、ニュース番組などで外来語を使いすぎて分かりにくい、というお年寄りからの意見が寄せられた、というニュース記事が報じられていたのである。それに対するNHK側の反応である。
 外来語多用 することに 同意 して、これからもじゃんじゃん外来語を使います、とNHKが言っているかのようだが、そうではなく、外来語多用しているという件の批判に対し、その現状を認めたという意味で、同意 というわけである。
 誤解が生じやすいとと思ったようで、ほどなく以下のように改変された。

(39)' NHK会長「外来語多い」認める

 これなら話が通るだろう。

 

(40) 「ビキニ目障り」40代女性激怒

 と読めば、海辺の町をビキニの水着というあられもない姿で歩いている若い女性のはしたなさに、おばさんがキれて鉄槌(?)を下した、というような話かと思うだろう。
 しかし、これも違う。実は、アメリカの事件で、40歳台の女性が市営プールに泳ぎに行き、ビキニを着用したところ、プールの係員に「肌を露出しすぎで、公共の場に好ましくない」と、更衣もしくは退去するよう求められ、激怒した、というニュースだった。
 退去勧告を拒否した女性は、やって来た警官に強制退去させられたということで、女性のビキニ姿の写真もニュースに出ていたが、確かに水着からかなりはみ出している感じで、品格にはやや欠けるようではある。退去まで求めるほどかどうか、意見が分かれよう。

 
 これからも、面白いタイトルが溜まったら、また検討してみよう。

※ このカテゴリーの記事のように、まるよしの楽しい日本語の話を満載した本、ぜひお手に取ってお読みくださいね。

 『まるごと とれたて 日本語談義 -ラジオ番組『高専ライブ』で語ることばの話-』
 桐島周 2016 勝木書店 定価1500円(税込)
 
ISBN: 978-4-906485-09-3 
 (桐島周は、まるよしのペンネームです)

 勝木書店のホームページでご注文いただくのがご便利かと思います。
  http://www.katsuki-books.jp/ (書籍検索から)
 Amazon・楽天などでは購入できません。

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